I邸新築
門司区は傾斜地に建つ住宅が多く、この事例も築20年ほどの住宅を解体後新築したものです。1階の掘り込み車庫は補強コンクリートブロック造でしたがもったいないので鉄骨で補強して車庫として使い、2階、3階を木造で新築しました。傾斜地に建つ住宅は大体このような構造になります。鉄筋コンクリート造や鉄骨造で全体を建てる方法もありますが、鉄筋コンクリート造は建物重量が大きくなり地盤補強や基礎工事に多くの費用が掛かり経済的ではありません。海の近くは鉄骨造は腐食の問題もあります。ですから1階を鉄筋コンクリート造として基礎構造と一体化します。
このような構造は「混構造3階建て」といわれ構造計算が必要になります。
依頼者の一番の心配は、既存の車庫が補強コンクリートブロック造のためそのまま使えるかということでした。第二はシックハウス対策でした。奥様が花粉やシックハウスに敏感でした。第三はご主人の趣味であるドラム練習室(完全防音室)を設けるということでた。
既存の車庫を流用するため、地盤調査や補強コンクリート造の強度計算を行い、鉄骨で車庫の補強を行うことを提案しました。第二の要望であるシックハウス対策は内装をすべて無垢の木材と漆喰仕上げとしました。第三の防音室についてはプロのドラマーに叩いてもらって遮音テストを行うことにしました。ドラム室用の防音工事のほか内装にも杉の無垢材を張った結果、外からはほとんどドラムの音が聞こえないほどに仕上がりました。以上三点の提案が決め手になったと思います。
傾斜地の住宅は入り口をどのレベルに設けるかでアプローチにスロープや階段が必要になったり、建物内部に階段やスロープが増えたりします。この施主様は老後のことを考えて、屋内はバリアフリーで屋外に階段やスロープを設けることにしました。その代わりに将来車椅子などが必要になった場合のことを考え、玄関付近に昇降機などを設置するスペースを設けました。また、春の花粉侵入を防ぐためと洗濯物が外から見えないようにサンルームを設けています。なお、この建物は長期優良住宅の認定を受けています。
2階の寝室は傾斜天井でしかも小屋梁が見える構造であるため、山小屋の別荘にいるようで夢のようですと言っていただきました。またご主人は会社から早く帰宅するようになったとのことです。